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⇩⇩本日のコラムです⇩⇩
隣室賃借人の迷惑行為と賃貸人の責任
建物の賃貸人は、賃貸借契約に基づき、賃借人に建物を使用収益させる義務を
負っていますが、この使用収益させる義務の内容は、使用収益が可能な状態で建
物を賃借人に引き渡せば履行が完了するものではありません。引渡し後も建物を
賃借人の使用収益に適する状態を保持し、使用収益に適さない状態になっている
ときは、その状況を改善し、賃借人の使用収益に適する状態に回復する義務が含
まれると解されています。迷惑行為をしているのが賃借人ではなく、その子であ
るとしても、子は賃借人の履行補助者と解されます。その状態を賃借人が放置し
ていることは賃借人の用法遵守義務違反と考えられますので、賃貸人は賃借人の
責任を問い、状態の改善を求めることができます。賃貸人の再三の制止・警告に
もかかわらず賃借人側の迷惑行為がやまず、それが受忍限度を超えるときは、賃
貸人は、賃借人の用法遵守義務違反により信頼関係が破壊されていることを理由
に賃貸借契約を解除することができます。
◎賃貸借契約において当事者が負担する義務の内容
→賃貸人の賃貸借契約に基づく義務
改正民法601条は、「賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方
にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約すること
によって、その効力を生ずる」と定めていますが、賃貸人の、目的物を賃借人に
使用収益させる義務とは、建物を使用収益に適する状態において賃借人に引渡し
を済ませれば、それで義務が終了するものではないと解されています。賃貸人
は、目的物の引渡し後も、賃料を収受する以上は、目的物を使用収益に適する状
態に維持する義務を負うということで、それゆえに、賃貸人は賃貸目的物に対す
る修繕義務が課されているのです(改正民法606条)。
→賃借人の賃貸借契約に基づく義務
賃借人は、賃料支払義務を負うことは当然ですが、同時に、目的物を用法に従っ
て使用収益する義務を負うと解されています。したがって、共同住宅において
は、各入居者が住居としての使用が果たせるように、静謐を保ち、住環境を破壊
することのないよう使用収益する用法遵守義務を賃借人は負っているのです。
→賃借人の他の入居者に対する迷惑行為
このように見れば、賃借人は、ただ賃料さえ支払えばよいわけではなく、用法に
従って賃借物を使用収益する必要があるわけですから、オートバイでマンション
付近を走り回り、さらには隣室で深夜に酒盛りをして騒いだり、1階のエントラ
ンスでシンナー等を使用したりする行為は、住民の生活を乱すものであり、また
住環境を著しく破壊する行為であるということになります。ご質問のケースで
は、迷惑行為を行っているのは賃借人本人ではなく、成人した賃借人の子である
ということのようですが、親と子は別人格ではありますが、賃貸共同住宅におい
て、賃借人の子が近隣住民に迷惑行為を行っている場合、子は賃借人の履行補助
者と考えられ、賃借人はそれを制止すべきであると考えられます。
同時に、賃貸人は、目的物を使用収益に適する状態に保持する義務がありますか
ら、賃借人に対して、迷惑行為をやめさせる法的義務を負っていると考えられま
す。したがって、賃貸人は、賃借人に対し、迷惑行為を停止させるよう通知し、
再三の通知にもかかわらず、賃借人が迷惑行為を停止しない場合で、その迷惑の
程度等から、それが信頼関係を破壊するに足りる場合には、賃貸人は、賃貸借契
約を解除することができ、また、そうすべき義務を他の賃借人に対し負担してい
るものと考えられます。
◎建物の賃貸人は、賃貸借契約に基づき、賃借人に建物を使用収益させる義務を
負っているが、建物を使用収益させる義務は、建物を使用収益が可能な状態で引
き渡せば終了するものではなく、引渡し後も建物を使用収益に適する状態を保持
する義務を負う。
◎共同住宅において、賃借人が、他の入居者の迷惑になる行為を行うことは、賃
借人の用法遵守義務違反となる。
◎迷惑行為を行っているのが賃借人ではなく、賃借人の成人に達した子であると
しても、賃借人の履行補助者と考えられるので、この迷惑行為を放置している賃
借人の義務違反と考えられる。
◎賃借人の行為が他の入居者に与える迷惑が受忍限度を超え、用法遵守義務違反
が賃貸借の当事者間の信頼関係を破壊するに足りる場合には、賃貸人は賃貸借契
約を解除することができる。
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